はじめに―『民主主義のつくり方』
さっそくだが、一冊民主主義に関する勉強をしたので、「はじめに」の章のレジュメをあげておこうと思う。
はじめに
〈ルソー型〉から〈プラグマティズム型〉へと民主主義像を転換するのが本書の目的。
■〈ルソー型〉:たしかに一般意志の考え方はおもしろいが、一般意志という「フィクション」に頼らずに民主主義を論じる方法を開拓したい
- ・ポイントは主権論
- ・近代ヨーロッパの主権論は宗教戦争が発端。必要なのは、複数の世界観を超越するひとつの意志の存在が必要であると考えた。
- ・ただ、差異を認めない点で少々抑圧的
- →結果的に、現代では市場モデルで政治を語ることがひとつの流行
- →「各個人がそれぞれの意志をもって、相互に無関心なままに行動する」「各自の自己利益の追求が、市場のような非人格的なメカニズムによって調整される」
- →共同の意思決定としての民主主義という理念を完全に放棄してもよいのか
■〈プラグマティズム型〉:人びとの「信じようとする権利」を最大限に活用=自分の選びとった理念を追求する権利があり、重要なのはむしろ、そのような理念が結果として何をもたらすか
- ・「理念」=人間が世界に適応し、世界を変えていくための実際的手段。理念は人間と世界をつなぐ媒介。
- ・プラグマティストは理念がそれ自体真理であるかどうかにはほとんど興味をもたなかった。
- →「重要なのはむしろ、各自が自らの理念をもつことに関する平等性と寛容性である。」
- ・習慣の重要性
- →「人々は行動の必要にかられて判断し、事後的にその根拠を探る。そのような行動が繰り返され、やがてパターン化していくことで習慣が形成される。」
- ・「新たな習慣をつくり出すことによって、社会はつねに更新されていく可能性がある。」
一章
- プラグマティズムと経験「経験」=試すこと
- プラグマティスト=とくに日常経験の意義を主張した人たち
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- 経験とは、人びとが他者とともに、その行動によって世界とかかわっていく過程
- ウィリアム・ジェイムズ「純粋経験」「多元的宇宙」
- デューイ
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- 一人ひとりの個人が「私はどのように生きるべきか」という問いに、自分なりに答を出すことを重要視
- 戦後の経験=藤田省三
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- 日本の荒廃のなかに再出発点となるべき「経験」を見出し、その意味を考えた
- 「経験とは物と人間との相互的な交渉のことであり、物事との自由な出遭いにはじまって物や事態と相互的に干渉する」
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- 経験を「相互作用」「相互的交渉」としている点が重要
- 藤田独自の「経験」=「経験の重視と自由の精神とは分かち難い一組の精神減少」
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- 経験が失われれば自由も失われる
- 経験を拒み、言い換えれば自己に拮抗し拒絶を示すような事態との遭遇を回避し続ける時、逆説的に人は自動的な機械の部品にならざるを得ない
- (補足)災害ユートピア
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- 災害時の方が人びとが協力しあう風潮があり、それが理想郷に近いこと
メモとか
「はじめに」によって類型化された〈ルソー型〉と〈プラグマティズム型〉の分類は非常に興味深かった。
参考文献
『民主主義のつくり方』、宇野重規